最大クラスの地震・津波の研究について

  内閣府中央防災会議は、平成24年8月29日に、「南海トラフの巨大地震による津波高・浸水域等(第二次報告)及び被害想定(第一次)について」を公表しました。

 公表内容について、今後の防災施策、防災訓練、自主防災組織の訓練等の一助とするため、重要な部分を取りまとめましたのでご参考にしていただけたらと思います。

 中央防災会議は、今後、「あらゆる可能性を考慮した最大クラスの巨大な地震・津波を検討していくべきである。」とし、従来の地震断層モデルを過去の地震、世界の海溝型地震の震源断層モデルを調査し、強震動を評価するための「強震断層モデル」と津波高等を評価するための「津波断層モデル」を区分して整理しています。

 中央防災会議(2003)との相違点は、マグニチュード9クラスの地震を想定するとともに、断層モデルの設定の要領が異なることにあります。

 黄色線の枠が中央防災会議(2003)の断層域ですが、今回は、地震動の断層域(灰色線)が陸域まで大きく見直され、津波の断層域(赤色)がトラフ軸(黄色)から地震動の断層域まで範囲を拡げているのが特徴です。

南海トラフの巨大地震の想定震源断層域

 強震断層モデルで震度を、津波断層モデルで津波を推計し、それぞれを組み合わせて、時間、風速等の条件下で、より現実的な被害想定を明らかにするものとなっています。

 

最大クラスの地震・津波の性格とは

 平成23年に発生した東北地方太平洋沖地震で得られたデータを含め、現時点の最新の科学的知見に基づき、発生しうる最大クラスの地震・津波を推計したものです。

 その発生時期を予測することはできませんが、その発生頻度は極めて低いとしています。

  

「最大クラスの津波」の受け止め方

 「最大クラスの地震・津波」は、南海トラフで次に発生するというものではありません。命をまもることを最優先にして、最大クラスの津波に対応するため、避難訓練や防災対策を更に充実することを狙いとしています。

 「強い揺れが起きたら逃げる。」ということを一人ひとりがしっかりと認識して戴きたいと述べられています。

 

津波対策について

 津波対策の基本は、素早い避難、住民一人ひとりの迅速かつ主体的な避難行動が基本となり、その上で、海岸保全施設等の対策、情報伝達の施策が後押しするものとしています。

 

経緯等

  中央防災会議は、南海トラフの巨大地震について、平成24年3月31日に第一次報告として「震度分布・津波高(50mメッシュ)の推測結果」を、8月29日には、「震度分布・津波高(10mメッシュ)の推測結果」と、より精密にしてとりまとめたものです。

 また、「建物被害・人的被害」もより現実的な手法を検討し推測結果としてとりまとめ、第一次報告としています。

 

津波高・浸水域等(第二次報告)について

 南海トラフの巨大地震による津波は、最大クラスの津波断層モデルを設定し、10mメッシュ(四方)単位の地形を反映して、海岸での津波高、陸域の遡上した津波の浸水域・浸水深を推計することにより精度を高めています。

 また、様々な条件を設定していますが、一例として、堤防の条件では、「津波が現況の堤防を越えた時点で堤防が機能しなくなる。」として推計されています。

 東海地方に大きな被害が発生する場合の検討で、桑名市では、津波高さ2~5mとされています。

ケース(1)「駿河湾~紀伊半島沖」に大すべり域を設定

 

 桑名市の津波高は、影響の大きい東海地方で大きな被害がでるケースで、最大5m、平均4mです。

三重県市町村別津波高・浸水域(抜粋) 

被害想定(第1次報告)について

 被害想定の目的ですが、地震動と津波を検討し被害想定を行い、被害規模を明らかにすることにより防災対策の必要性を国民に周知すること、広域的な防災対策の基礎資料となるものとしています。

 更に、防災対策で被害を軽減することを示すことで、防災対策を推進する国民の理解を深めることを目的としています。

 

被害想定の設定

 今回の想定は、地震動5ケースのうち2ケースで、「基本ケース」と「陸側ケース」、津波11ケースのうち「東海地方」「近畿地方」「四国地方」「九州地方」のそれぞれで大きな被害が想定される4ケースについて、それぞれ地震動と津波を組み合わせて被害を想定しています。

 想定するシーンとして、冬深夜、夏昼、冬夕の時間帯と平均風速と風速8m/秒の2ケースを設定し6ケースとして推計しています。

 一例としまして、地震動の基本ケースの震度分布は桑名市で6強と推計され(図3)、最も影響が大きいと想定される陸側のケースも6強となっています。

 基本ケースの震度分布

陸側ケースの震度分布

 

 最大震度は、基本ケース、陸側ケースとも6強が推計されています。中央防災会議(2003)では6弱でしたので更に強い震度が想定されます。 

三重県市町村別最大震度(抜粋)

 

また、桑名市に焦点をあてて、津波浸水域を確認します。

津波の浸水分布

 揖斐・長良川沿いに0.3~2.0mの浸水深が推計されていますが、細部の状況は明確ではありませんので、今後の検証と三重県の被害想定を参考に明らかにしたいと思います。

 また、液状化の可能性も推計されています。

 液状化可能性

 

被害想定項目

 被害想定は、建物被害と人的被害を推計しています。建物被害では、その原因により揺れ、液状化、津波、急傾斜地崩壊、地震火災等について全壊棟数を推計しています。人的被害は、死者数として、建物倒壊、津波、急傾斜地崩壊、地震火災、ブロック塀の転倒等について推計しています。

 

主な被害想定結果

 被害想定結果は、各県レベルの単位で推計されていますので、各市町村単位の推計はありません。

 参考として、三重県の最も被害が大きい場合の想定について紹介します。

 建物被害は、地震が陸側ケース、津波は、東海地方に大きな被害が想定されるケースで冬18時、風速8m/秒の場合で、合計約239,000棟の全壊と推計されています。

 建物等被害

 人的被害は、地震が陸側ケース、津波は、東海地方に大きな被害が想定されるケースで冬深夜、平均風速、早期避難率が低い場合で合計約43,000人の死者と推計しています。

 人的被害

 しかしながら、条件が同じでも、早期避難確率が高く呼びかけがあった場合では約10,000人の死者と推計され、迅速な対応を強調しています。

人的被害(抜粋)

 

防災対策の効果

  防災対策によって被害軽減効果が推計され、建物の耐震化率の向上、早期避難率の高上、津波避難ビルの活用、避難の呼び掛けにより被害を減少し、死者数は最大で約9割減少すると推計されています。

 

主な留意点

 被害想定の手法は、必ずしも確立されたものではなく、東日本大震災による被害状況についてはまだ十分に検証できていないのが現状であり、今後不 断の点検・見直しを行い、必要に応じて被害想定は修正されます。

  さらに詳しくご覧になりたい場合は、内閣府の防災情報ページをご覧ください。