郷土史研究の歴史(4) - 郷土史(郷土史研究の歴史)
【写真は、蓮花寺・宇賀遺跡の発掘現場】
 

郷土史研究の歴史(4)  -遺跡発掘の必要性-


 今年は西暦2000年です。人間の一生はせいぜい80年ほどですから、人類の歴史は長いなぁと思います。目先のことにとらわれずに、長期的な展望を持ち、勇気を持って、現実の問題解決に当たるためにも、歴史から学ぶ必要があると私は考えます。
 
 ところで、歴史を調べる方法は犯罪の捜査とよく似ています。第一に必要なのは物的証拠です。第二に証拠文書(文献)です。第三は人による証言です。ときには文書や証言には間違いもありますが、物は正直でウソをつきません。犯罪を立証する場合でも、決め手は物的証拠です。歴史でも、とくに古代史では発掘によって得られた物が唯一の証拠です。
 
 桑名市内では縄文時代の遺跡はまだ見つかっていませんので、今のところ弥生時代からが桑名の歴史です。しかし桑部地区から山続きである隣の朝日町や四日市市では弥生時代の集落跡も見つかっているのに対し、桑名市内では弥生時代の遺跡はごく一部分しか見つかっていません。
 
 文献上に初めて桑名が登場するのは、壬申(じんしん)の乱が起きた672年です。そのとき桑名郡家(ぐうけ)に大海人皇子(おおあまのおうじ。のちの天武天皇)らが泊まられたと『日本書紀』(文献)に書かれています。この桑名郡家の場所については、様々な言い伝え(証言)がありますが、今のところ不明です。文献や証言ではわかりませんので、発掘により明らかにするほかはないのです。
 
 発掘調査はなにも古代のことに限りません。身近な父母や祖父母の時代も発掘の対象です。桑名は戦災や伊勢湾台風で多くの物が失われ、50年ほど前の様子もわからなくなっていますが、発掘で浮かび上がらせることが可能です。
 
 各地の遺跡の発掘現場を見ますと、現在の技術でも作れないようなものが出土することがあり、どのようにして作ったのか不思議に思われるものもあります。私たちが想像もできないほど、昔の人は知恵があったと考えさせられます。また古い時代ほど人類は自然と共生しており、環境破壊はわずかでした。現在は環境問題が大きな課題となっており、人類破滅の危険性をはらんでいます。歴史を調べることにより、環境問題を解決する糸口が得られると思います。
 
 私は遺跡発掘などの考古学には知識がありませんが、桑名市には遺跡発掘に携わる学芸員がいて、暑い日も寒い日もで黙々と土を掘り、発掘調査にあたっています。彼らの努力により、少しずつではありますが、桑名の歴史を解明できる成果は次々と出てきているのです。
 

                            (桑名市文化財保護審議会委員・西羽 晃)