第4回くわなの自然「ランと環境」

【桑名市自然環境保護推進員・伊藤 聡志】

 ランといえば、カトレア、シンビジュームなどの華やかな洋蘭を思い浮かべる方が多いかと思いますが、今回は、桑名市内で見ることのできる(できた)野生ランを紹介します。

 

 

 3月、シュンランは、春一番、緑色の花をひっそりと咲かせます。清楚で控えめな和蘭の代表とも言えます。ひと昔前までは、ちょっと里山に入れば、いたる所で見かけたものですが、最近、見かけることはあまりなくなりました。

 

  

 5月、友人に教えてもらい、キンランの集落を見に行きました。その一角にだけ、10株ほど見事な花を咲かせていました。下草刈りもし、守っていきたいとのことでしたが、3週間後に行ったときには、右のようなありさま。心が痛みます。このランは、キノコ(ラン菌)の菌糸から栄養をもらい育つとのこと。持ち帰っても、やがて消えてゆきます。その場所の環境を保ち、その場所に見に行くしかないと思うのですが。

 

 

 6月、全く地味な花です。褐色の小さな花が数輪、日の当たらない林床に咲きます。黒い蘭でコクランといいます。この季節、ヤブ蚊が多くて、誰もこんな薄暗い林床に入ろうとしませんし、入っても、ゆっくり観察どころではありません。しかし、よく見ると、愛嬌のあるかわいい花を咲かせます。しっかり「虫除け」をして、日の当たらない林床をのぞいて見てください。

 

 

 7月、この写真を撮ろうと何回もこの場所に足を運び、やっと一輪撮れました。ノヤマトンボ、オオバノトンボソウともいいます。これもラン菌の助けがないとダメみたいで、この一角に集まっていました。何株かつぼみはつけていたのですが、機嫌が悪かったようで、咲いたのはたった一輪。気むずかしい花です。

 

このキノコとの関係はわかりませんが、まわりにも何種類かのキノコが出ていました。どなたかの所有地だと思いますが、こんな環境を残して欲しいものです。

ランの種子は、ほこりのように小さく、落ちたところに育ててくれるラン菌がいないと発芽できないそうです。

 

多くのランが暗い林床を好むのは、他の植物との競争を避けるためと考えられます。そのために、ラン菌は欠かせません。中には、葉緑素を捨て、ほぼラン菌から栄養をもらって生育するものまでいます。

また、ランの花がこんなへんてこな形をしているのは、花粉を運んでくれる虫を特定しているからといわれています。

このように、ラン菌や他の植物、動物を利用して進化してきたランたち、ずっと見ようと思えば、その環境(暗い林床、湿度、虫、菌など)を守るしかないということです。

 

近年、気になっていることがあります。それは、竹が侵攻していることです。桑名名産の竹ですが、管理しないと、どこまでも広がり、広葉樹林を駆逐し、ランが生育できる環境がなくなってしまいます。また、宅地開発、工業団地造成、太陽光発電でごっそりなくなります。

里山の価値がなくなった今、この環境を残そうとするのは難しいのかもしれません。しかし、人口減少の時代、これ以上の開発は控え、里山の自然に親しめる町になって欲しいと願っています。