更新日: 2022年4月15日

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桑名の連鶴

桑名の連鶴-「桑名の千羽鶴」

桑名の千羽鶴-桑名の連鶴鶴は瑞鳥として古くから親しまれ、折紙といえばすぐ鶴が連想されるほどである。
一般に「千羽鶴」といえば、一羽の鶴、または、一羽の鶴を千羽折り、糸などで繋いだものをさすが、桑名に伝承されている千羽鶴は、一枚の紙から数羽の連続した鶴を折る独特の連鶴である。
これは、江戸時代、桑名(現在の三重県桑名市)長円寺の住職魯縞庵義道(ろこうあんぎどう)によって考案された連鶴で、2羽から最高97羽の鶴を、一枚の紙に切り込みを入れるだけで繋いでいく方法で折るものである。
一羽ずつは普通の鶴と同じ折り方であるが、親鶴の上に子鶴が乗るような立体的なものや、何枚も重なる部分が出るもの、果ては穴を開けて通すものなどがあり、折り上げてみると、発想もデザインもすばらしく、現在にも充分通用する感覚である。
これが江戸時代に、しかも、地方の一僧侶によって考案されたということは驚異的である。
そして、義道のこの折り方は「桑名の千羽鶴」と名付けられ、桑名市の無形文化財に指定されている。

折紙は、紙漉きの技術が中国から伝えられた推古天皇の頃から「御幣(ごへい)」や「紙垂(しで)」のように祭祠儀式用として登場し、平安時代以降の折紙は、熨斗(のし)や紙包など儀式・贈答・儀礼に用いられるようになった。
折紙が遊びとして登場するようになったのは、江戸時代に入ってからで、世の中の安定、紙の普及、庶民層の台頭などで芸術的な折紙が誕生した。
中でも鶴は昔からめでたいものの象徴となっていただけあって、その形の優美さと併せて折紙の代浮ニなった。

義道(1762-1834)は、長円寺11世住職で「魯縞庵」は号である。
彼は、歴史的なことに造詣が深く、多くの著書を著しているが、戦災でそのほとんどが焼失し、桑名の地誌『桑府名勝志』(1798年刊)、名所旧蹟を紹介した『久波奈名所図会』(1802年刊)、これらの基礎資料となった『縞庵随筆』のみが現存している。
また、俳句も詠む風流人で、文化人との交流も深く、桑名藩の儒学者広瀬蒙斎(もうさい)・片山垣斎(こうさい)や『東海道名所図会』の編著者秋里籬島(りとう)、大坂の本草学者蒹葭堂(けんかどう)木村巽斎などの知遇を得ている。

僧侶としての務めや文化人としての活躍の合間に、義道は多くの連鶴を考案とていたようで、「折紙にした鶴の姿態百品五百羽」を書き留めた『素雲鶴(そうんかく)』を著している。
義道は、これら連鶴の折形を完成させるのに18年という歳月を費やしており、そこには、思いつきや手慰みではなく、従来には無い変化に富んだ鶴を作り出そうとする義道の意志が感じられる。
しかし、『素雲鶴』は現存せず、百品五百羽の中から選んだと思われる49種類の折形を紹介した『千羽鶴折形』が寛政9年(1797)に刊行されている。
折形は折紙の意味で、『千羽鶴折形』は、遊びの折紙の書物としては世界最古である。
この本が伝承されたため、桑名の千羽鶴が蘇ったのである。

桑名の千羽鶴は、一羽の鶴さえ折れれば誰でも作ることが可能であるが、次の事項に注意がいる。

まず、何よりの基本は「一羽の鶴が完全に折れること」である。
義道の考案した鶴にはそれぞれ名前が付けられており、その名称は『千羽鶴折形』によると、形からくるイメージによって命名されたようである。
したがって、名前と形は一致していなければならず、そのためには鶴の折り方の基本が大切といえる。

次に、「楮(こうぞ)」「三椏(みつまた)」「雁皮(がんぴ)」を原料とする、いわゆる「和紙」を使用しなければならない。
和紙は繊維が絡み合っているので、少々無理な力を加えても切れることはなく、桑名の千羽鶴は、形によってはかなり無理をしなければ折れないものもあるので、上質の和紙を選ぶことが必要である。

また、「切り残し部分はなるべく少なくする」ことは、折上がりが美しくなるコツといえる。

そして、「折目正しく」卓上に置いてきちっと折られてきた折紙の基本から外れ、桑名の千羽鶴は「手に持ったまま折る」ことが原則である。
何故か?それは実際に桑名の千羽鶴を折ってみれば即座に理解できる。

折紙は「女子供の遊び」という意識から脱皮し、最近、日本固有の文化として見直され、新作や創作折紙が多く発表されるようになり、ようやく『千羽鶴折形』も脚光を浴びるようになった。

現在、桑名の千羽鶴は、定期的な講習会、公民館講座、生涯教育講座、小学校のクラプ学習などに取り上げられて普及し、また、ホームステイの機会などで海外へも紹介されており、日本文化の啓蒙の一端を担っている。

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