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おいしくてかわいい、桑名フォトジェニックグルメ

桑名の女性たちが生み出す、華やかでキュートなグルメ

料理は、おいしいだけでは満足できない。やっぱり、見た目も大事。そこで、桑名で思わず写真を撮りたくなるような、華やかでかわいらしい「フォトジェニックグルメ」を探しました。それらを作っていたのは、図らずもすべてが女性。独自の感性を発揮し、たのしみながら、でも粘り強くこだわりを追求し、生き生きと輝く桑名の女性たち。そのこだわりと自慢のグルメをご紹介します。もちろん、見た目だけじゃない、味も折り紙つきです。

桑名宿本陣の流れを汲む老舗の「映え」スイーツ ── THE FUNATSUYA(ザ フナツヤ)

江戸時代、東海道の要衝として指折りの活気ある城下町、湊町、宿場町だった桑名。隣の宮宿(現在の名古屋市熱田区)と東海道唯一の海路で結ばれており、海上七里を舟で渡ったことから「七里の渡し」と呼ばれています。当時、周辺には多くの宿が立ち並び、桑名宿は旅籠数で東海道第2位の規模を誇っていました。

そんな「七里の渡跡」から歩いてすぐの場所にあるのが、THE FUNATSUYA(ザ フナツヤ)です。桑名宿で最大かつ、最も格式高い宿である「大塚本陣」の流れを汲む老舗で、明治8年に大塚本陣の建物を活用した料亭旅館「船津屋」を開業、平成22年にモダンな結婚式場に生まれ変わりました。ザ フナツヤでは、格式ある船津屋の伝統を受け継ぎながら、新たな世代へ向けた様々な取り組みを行っています。

併設のイタリアンレストランでいただけるデザートもその一つです。華やかでキュートなデザートは、スイーツ好きの注目の的。SNSでも話題を集めています。スイーツをきっかけに、誰でも気軽に船津屋のもてなしを受け、その空気に触れることができるのも大きな魅力です。

高級料亭の雰囲気をそのまま残すザ フナツヤの入口。レストランへもこの玄関からアクセスします

船津屋は泉鏡花の小説『歌行燈』の舞台として知られており、作中に「湊屋」の名で登場します。玄関横の壁沿いには、歌行燈の句碑が建てられています

「船津屋」の看板を掲げる入口

パフェ、ロールケーキ、タルト。彩り豊かなランチデザート

ザ フナツヤでは、3種類のランチデザートがラインナップ。前菜とパスタの手軽なランチから、ディナーと同様のフルコースランチまで、すべてのセットメニューから選ぶことができます。3種類のうち1種類は定番の「フナツヤロール」、2種類は月替わりで、季節の食材を取り入れたスイーツがいただけます。

店名を冠したフナツヤロールは、注文を受けてからクリームを塗って巻いているので、いつでも巻きたてのふわふわ。フランス産のエシレバターを贅沢に使用した、やさしく上品な味わいの一品です。

月替わりスイーツの1つは、人気のパフェ。いちご、桃、ぶどうなど季節のフルーツをメインにしたパフェは、見るだけでわくわくさせる一品で、毎月食べに行きたくなってしまいます。撮影時は、三重県内の農園「TomiBerry」の直送いちごに、白あんのパンナコッタと黒豆茶のゼリー、抹茶とホワイトチョコのアイスと、和の素材を取り入れたパフェを提供。甘みとほのかな苦みのバランスが絶妙で、生クリームなど洋の素材との相性も抜群です。

いちごと抹茶のパフェ(素材は月替わり)。串に刺して並べたいちご、栗の甘露煮、黒豆や、柚子クリームを挟んだ紅白マカロン、きなこのメレンゲにルビーチョコレートと、盛り付けも素材の組み合わせも彩り豊か

いつでも巻きたてのフナツヤロールはザ フナツヤの定番人気スイーツ

もう1種類は、季節によってタルトやマチェドニアなどを提供。このときのデザートは、デコポンのタルト。クリームをムース状にしたエスプーマがぽってりと載っていて、雪のようです。割ってみると、みかんのアイスクリームにデコポンが添えられており、白とオレンジの対比が鮮やか。底にはサクサクのタルト生地が敷き詰められています。

デコポンのタルト エスプーマ。見た目の真っ白なかわいらしさと、割ったときに見えるみずみずしいオレンジ色と、二度驚きを感じることができます

地元食材にこだわり、素材のよさを前面に出したデザートを考案

素材の味と組み合わせ、彩り、盛りつけまで考えつくされたザ フナツヤのデザートですが、毎月スタッフがアイデアを持ち寄り、試行錯誤しながら考案しているのだそう。パティシエの安藤由香さんをはじめ、5名のパティシエもスタッフもすべて女性で、「SNS映え」も抜群の傑作デザートが続々と誕生しています。

「メニューを考えるときは、スタッフ一人ずつが作ってきたものを食べて、手直しして、の繰り返しです。そのまますぐ決まることもあれば、迷走することも。人気のお店を食べ歩いたり、SNSもチェックします。どんな食材を使うかをまず考え、たとえば柑橘がおいしい時期ならみずみずしさを大事にするなど、素材のよさを生かすよう心掛けています。なるべく地元のもので、農家直送の素材を使うのもこだわりです」

パティシエのお二人。左が田中比奈子さん、右が安藤由香さん。スタッフはみんな仲がいいとのことで、試食会も女子会のような雰囲気で楽しそうです

歴史ある空間でとびきりのスイーツを

レストランがあるのは、結婚式のバンケットとして使用される、華やかでモダンなガーデンルーム。料亭の趣を残す本館と庭でつながっており、入口は本館側にあります。玄関には大きなケヤキの一枚板が張られており、土足で上がれることに訪れた人はまず驚くかもしれません。これも、船津屋が決断した変革の一つです。

大名や天皇が宿泊した大塚本陣から歴史が始まり、高級料亭として皇族をはじめ、文豪や要人に愛された船津屋。そして、桑名のまちを象徴する名店として人々の憧れであり続けながら、より気軽に足を運ぶことができる現在のザ フナツヤ。変革を続けながらも「料亭 船津屋」の看板を掲げ続けることに、伝統を継承する決意が伺えます。そんな船津屋の歴史にも想いを馳せながら、とびきりかわいくておいしいスイーツをいただく至福の時間を過ごしてください。

ランチをいただけるのは1階にあるバンケット。2階には桑名ならではの木曽三川を望む「ザ リバールーム」があります

レストランのある披露宴会場と本館をつなぐ庭のアプローチ

本館1階は待合室。2階にはかつて皇族や要人にしか使用が許されなかった大広間を使用したチャペルがあります

THE FUNATSUYA(ザ フナツヤ)

住所

三重県桑名市船馬町30

営業時間

11時00分~15時00分(13時30分ラストオーダー)

※個室は11時00分~22時30分(20時30分ラストオーダー)

※要予約。2名より個室対応。

定休日

土曜、日曜、祝日

その他

営業時間・定休日・料金等の最新情報については公式ウェブサイトでご確認ください。

URL

施設紹介ページ

公式ウェブサイト(外部サイトへリンク)(別ウィンドウで開きます)

郷土料理を華やかにアレンジした「箱ずし」で地域の課題解決 ── すし工房なばな

長良川、揖斐川、木曽川の木曽三川に囲まれ、一面に田んぼが広がる桑名市の長島地区。イルミネーションで知られる「なばなの里」と同じ地域に「すし工房なばな」はあります。地域の農家の女性たちが、長島に古くから伝わる「箱ずし」を新たな名物として蘇らせようとアイデアを持ち寄ったのがその始まり。華やかな箱ずしがイベント等で好評だったことから、2005年(平成17年)に工房を立ち上げました。以来、箱ずしを通じた輪が広がり続けています。

地元産の素材をふんだんに使った「すし工房なばな」の箱ずし。「なばな」は米と並ぶ長島地区の特産品として知られています

女性たちの笑顔とユーモアの花咲く工房

すし工房なばなの朝は早く、午前4時にはスタート。注文が多い日には2時、3時から作業を開始します。メンバーは、現在11名。代表の伊藤さなゑさんは85歳、その他のメンバーも60代から80代ですが、そうは見えません。働く姿はきりりとしていて、おしゃべりする顔は少女のようです。

「足元にお気をつけあそばせ」などと気の置けない仲間同士で軽口を交わし合い、笑顔とユーモアの花咲く工房ですが、1日に米2俵、120kg分もの寿司を作ったこともあるというから驚きます。しかも、ほぼ年中無休。軽やかに働き続けるその姿に、地域の農業を長年支えてきた女性たちの底力を感じます。

ふだんはにぎやかにおしゃべりしていても、調理中はプロの顔

伊藤さんを中心としたチームワークがすし工房なばなの強み

すし工房なばなの皆さん。旧JAながしま女性部の仲間でずっとともに活動しています

米の消費拡大と郷土料理伝承のため、新たな箱ずしを模索

箱ずしとは、冠婚葬祭やお祭り、運動会など人が集まるときに作られていた押し寿司で、戦中、戦後、伊勢湾台風と地域が大変だったとき、なによりのごちそうだったといいます。以前は専用の木箱が嫁入り道具として各家庭にありましたが、だんだんと作る家が減っていました。また、地元産米の消費低迷という問題も抱えていたそうです。

そこで、JA女性部の活動で世界中を飛び回り、JA全国女性組織協議会の会長を務めた経験もある伊藤さんが仲間に呼びかけ、各家庭の味を持ち寄って新たな箱ずしづくりに取り組んだのです。

代表の伊藤さなゑさんは仲間が信頼をよせるリーダー。JA女性部の活動でアジアやヨーロッパなど26カ国を巡ったそう。撮影の際にマスクを外してもらうと、周りからすかさず「開けてびっくり玉手箱」の声が。工房はいつでも笑いに包まれています

 

「長島のコシヒカリをいかにおいしく食べてもらうか。そう考えたときに、小さい頃から大好きだった箱ずしがいいと思いました。たまごやあさりのしぐれなど地元の素材を使って、誰からも親しまれる味と、見た目の華やかさにもこだわって。みんなで何度も練習してつくりましたよ」

具材を詰めた箱ずし専用の木箱を積み重ね、ぎゅっぎゅっと押します。この作業を30分から1時間程度繰り返します

具材を酢飯の上に盛りつけていきます。調理された一つひとつの具材にしっかり味がついています

工房では、箱ずしのほかに巻き寿司やいなり寿司も作っています。箱ずしにも種類があり、地元のコハダを載せた「つなし寿司」や甘辛く煮詰めた「もろこ寿司」などがあります

甘い香りと彩りが花畑のような新生「箱ずし」

伊藤さんたちが試作を繰り返して完成した新生「箱ずし」は、酢飯のほんわりとした甘い香りに、カラフルなストライプ模様がお花畑のよう。しいたけ、蓮根、かんぴょう、しぐれ、まぐろのそぼろなど、食欲をそそる茶色の具材のグラデーションに、たまごの黄色、かまぼことおぼろのピンクが彩りを添えています。手間をかけて手作りしたたくさんの具材がぎゅっと詰まって、ほおばれば様々な食感とやさしい甘み、うまみが広がります。

木箱に詰められた箱ずし。1つの木箱に2合の酢飯が入るそう。きれいに盛りつけられた具材はなばなの里の花畑にも少し似ています

 

箱ずしは、予約して工房で購入できるほか、Aコープながしま店、なばなの里「花市場」などでも販売しています。地元でも「昔懐かしい味」と人気で、工房には朝早くに出来立ての箱ずしを求めて近隣の人たちが訪れます。

長く活動を続ける中で、様々な出会いと体験をしてきた伊藤さんは、「今が本当に幸せ」といいます。地域の女性たちがつくり上げたすし工房なばなは、これからも箱ずしという豊かな食文化を伝えながら、そこで働く女性たちをも輝かせ続けていくに違いありません。

すし工房なばな

住所

三重県桑名市長島町福吉167

定休日

無休

購入できる場所

工房での販売は基本的に事前予約制(連絡先:0594-45-2223)※予約の電話、商品受け取りは7時00分~9時00分頃まで

※その他販売先:Aコープ長島店、なばなの里「花市場」、ながしま遊館(水曜、木曜、金曜のみ)、湾岸長島PA下り(土曜、日曜、祝日のみ)、桑名寺町通り商店街「三八市」(毎月3と8のつく日に開催)

定休日

無休

URL

施設紹介ページ

すべてが「KiKi」流、アートのようなひと皿 ── フュージョン KiKi

ピンク、オレンジ、紫、緑。カラフルで美しく、独創的な料理。厳選された食材。メニューはおまかせのコースのみ。ランチ、ディナーとも1日1組限定。若き女性オーナーシェフが一人で切り盛りする一軒家レストラン ── 。どんなこだわりをもつ店なのだろうと興味をひかれずにはいられない、それが桑名で今話題のレストラン「フュージョン KiKi」です。

たった1つのテーブルにつき、自分のためだけに、心を込めて作られたひと皿を迎える期待とワクワク感を体験してみませんか。

店内は赤じゅうたんが敷かれた落ち着いた雰囲気。食事だけでなくアートも楽しんでもらえるようにと、ギャラリーも併設しています。予約は基本的に最大4名まで

桑名駅から長島方面へ向かう伊勢大橋の近くにあるレストラン。建物は元々シェフの父の店があった一軒家

和食、フランス料理、イタリア料理、薬膳など、各国料理を融合した「フュージョン」がKiKiの料理のスタイル

「KiKi」を代表する一品「野菜のキューブ」

KiKiのコースは、予約時にゲストの要望を聞き、組み立てるスタイル。アレルギーに対応したコースも提供しています。「お客様と1対1でゆっくり向き合い、料理を作りたい」という想いから、現在はランチ、ディナーとも1日1組のみ受け入れています。

まず運ばれてくるのは前菜。KiKiのスタイルを象徴する「野菜のキューブ」は、5色の小さなキューブが一列に盛りつけられた、カラフルで斬新なひと品です。直火焼きしたものや、ピューレにした野菜を葛やゼラチンで固めており、味付けは塩コショウでシンプルに。この日の素材は、紫ジャガイモ、自家製味噌、ビーツ、十六ささげ、パプリカ。自家農園で栽培する無農薬野菜を使用しており、すべて素材そのままの色なのだそう。

かわいらしさもさることながら、しゅわっとほどけるもの、もちもちしたものと、その食感も新鮮。一つひとつに大地の力強い味わいも感じられ、こんな野菜の食べ方があるのだという驚きを感じさせます。

コースの前菜「野菜のキューブ」。コースは2種類あり、それぞれ品数は9品、11品ほど

和牛もはまぐりも見たことのないひと皿に変身

メインの肉料理、魚料理では、シェフの自由な感性と細やかな仕事が存分に発揮されています。例えば、和牛がメインのひと皿では、海苔を巻いた牛肉を、細かく刻んだキノコをソテーしペースト状に煮詰めたデュクセルとフォアグラを合わせた芯に載せる、といった具合。付け合わせには紫ジャガイモとアワビのパテや、ビーツで色付けしたジャガイモのペーストと黒ごま、ゴーヤを合わせてスイカに見立てたひと品など、丁寧な仕込みと和洋を問わない素材の組み合わせの妙が味わえます。それらの料理が、シェフ自らが作陶した器に盛りつけられた、まさにアート作品のような逸品です。

肉料理の一例。この日の和牛は内もものさらに内側にある希少部位であるヒウチを使用。左の小さな球は自家製ピクルス

 

桑名の地はまぐりも、KiKiならではのとびきりキュートなひと皿に。すりおろしたキュウリ、玉ねぎ、はまぐりの出汁などで作ったエスプーマ(泡状のムース)と、ボイルし昆布締めにしたはまぐりを合わせた一品は、フランス料理と和の斬新なミックスが楽しめます。

地はまぐりを使った料理の一例。ビーツで色付けしたピンク色のムースに花が添えられたかわいらしい一品

自給自足の生活から仏ミシュラン一つ星店などでの修業を経て22歳で独立

「ひと皿ひと皿を芸術作品のように組み立てるのが、私の料理のスタイル」と語る大野さん。それは、名古屋でレストランを営む父・政紀さんの影響が大きいといいます。「父が作る料理も、その美しさが特徴。キューブも父のスペシャリテなんです。安心・安全な食材へのこだわりも、家族で愛知県の離島である佐久島に移住し、中学、高校時代に自給自足の暮らしを体験したことが原点になっています」

佐久島では、漁業権を手に入れ現地でレストランを開業した父と釣りをしたり、大豆から味噌、しょうゆを作ったり。海水からは塩を作り、椿の種からは油を作ったそう。その後、調理師専門学校でオールジャンルの料理を学び、フランスのミシュラン一つ星レストランや父の店「満愛貴」での経験を経て、22歳の若さで独立。日本最大級の料理人コンペティション「RED U-35」最年少入賞や、若き料理人の登竜門「DRAGON CHEF」ファイナリストと、その才能を開花させています。

オーナーシェフの大野嬉々さん。生まれ育った桑名に戻った現在も、自家菜園での野菜作りのほか、休日には釣りやキノコとりなどにでかけることが多く、「趣味がそのまま仕事になっていますね」と笑います

 

最近では、桑名市限定で、未就学の子どもを持つお母さん、お父さんのための料理代行もはじめたという大野さん。専用のキッチンカーで出向き、自宅駐車場で調理をするそう。「産後のお母さんたちから、食事を作る時間がないという話を聞いて。大切な日に、家でリラックスして、おいしい料理を食べながら家族団らんの時間を過ごしてもらえたら。そう思って始めました」

つねに先を見据えて行動し続ける大野さん。子どもが大好きで、いつか自身に子どもができてからの料理人としてのキャリアも模索しているそう。

大野さんが作る料理は、自然の恵みをひと皿に表現し、それによって相手を笑顔にするもの。「みんなを喜ばせたい。食事って楽しいんだよって伝えたい」そう話す大野さんの想いが、おいしくて美しい、KiKiならではのひと皿を生み出しているのかもしれません。

フュージョン KiKi

住所

三重県桑名市東方563-11

営業時間

12時00分~15時00分、17時00分~21時30分

※ランチ、ディナーそれぞれ1組限定(最大4名)

定休日

不定休

その他

営業時間・定休日・料金等の最新情報については公式ウェブサイトでご確認ください。

URL

公式ウェブサイト(外部サイトへリンク)(別ウィンドウで開きます)

特集 くわなの過ごしかた。

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掲載日:2022年2月1日

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