更新日: 2024年2月16日
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桑名の鋳物
1.鋳物(いもの)とは
溶かした金属を鋳型(いがた)と呼ばれる型に流し込んで固めることを鋳造(ちゅうぞう)といい、金属を溶かし、鋳型に注ぎ込む製造方法とその製品(鋳造製品)のことを総称して「鋳物」といいます。
2.桑名の鋳物の歴史
はじまり(江戸時代~)
桑名の鋳物は、江戸時代・徳川家康の家臣・本多忠勝が桑名藩主となり、鉄砲の製造を始めたのが起源といわれています。この他に、灯ろう、梵鐘(ぼんしょう)、農具や鍋などが作られました。
近代工業への道(明治時代~)
従来の工法に代わって導入された、天然産の砂を使って造形する生型法(なまがたほう)は低コスト・大量生産に優れていたため、鋳物は当市の地場産業として確固たる地位を築いてゆきました。隣村の小向(現在の朝日町)で発見された砂が、この生型法に最も適した鋳物砂であったことも、鋳物が躍進する大きな原動力となりました。
明治36年(1903年)に製麺機や水道器具などの機械鋳物が当市で最初に鋳造され、次第にミシン鋳物など各種の機械鋳物が造られるようになり、明治、大正期を通じて、「東の川口、西の桑名」と呼ばれる我が国二大鋳物産地が確立されました。その後、桑名の鋳物は昭和15年ごろまではストーブ、鍋類、氷削機、ミシン、ガス器具などの日用品が多く製造されていましたが、終戦後は産業・経済の復興に続く高度成長の波に乗って近代化が進み、工業製品や建設材料を主力として発展しました。
今後の展望
戦後復興の流れのなかで、当市の鋳物工場数は200を越えるようになり、市内に多数乱立していました。しかし、高度経済成長や市街化の進展とともに殆どの工場が郊外や市外へと移転しました。
近年では、バブル経済の後、年々生産高は減少を続け、近年ではリーマンショックを期に急激な生産高の落ち込みがありました。また、安価な外国製品との競争、電力供給の不安、歴史的な円高などに加え、従事者の高齢化と後継者の不足など鋳物産業を取り巻く環境は厳しさを増しており、市では次の取組みにより鋳物工業の進展に努めています。
3.鋳物生産技術競技会
鋳物工業の振興及び鋳造技術の向上を図るため、鋳造技術を競い合う競技会を昭和31年から現在まで継続して開催しています。
本競技会は、市内の鋳物工場から選ばれた造形工が一堂に会し、作業時間、造形技術および製品の出来映えについて各人の技術を競っていましたが、競技を重ねるごとに造形への習熟が増し、審査が困難となったため、第18回競技会より事業所単位の競技に移行されました。
平成19年度からは、埼玉県川口鋳物協同組合主催の”埼玉県鋳造技術コンクール”と技術交流の一環として相互にオープン参加を行い、情報交換と技術交流に努めています。
鋳物は”古くて新しい技術”と言われており、このような競技会を通じて継続して技術の向上に努めていくことが大切だと考えています。
第68回(令和5年度)競技会での審査会と表彰式の様子【課題:フランジ】
4.くわな鋳物新商品開発事業
自社製品の開発と販売を目指して!
桑名市と三重県鋳物工業協同組合では、昭和初期ころまで本市で盛んに製造されていた日用品鋳物を再興させ、主力の工業製品に加えて自社製品も製造できる体制づくりについて検討を重ね、平成23年6月に、市、鋳物組合、桑名商工会議所と専門家からなる『くわな鋳物新商品開発委員会』を立ち上げました。
委員会には、ワーキンググループ(WG)を設けて、若手経営者などを中心に構成。商品の企画・検討、制作、モニタリングなどを行っております。
1.ごはん釜(IH対応、2合炊き)
県立相可高校の村林新吾教諭に委員としてご参画いただき、相可高校の学生の皆さんと協働で、
IHクッキングヒーターに対応した調理器具の開発を進めてきました。展示会での試食、アンケート調査の実施、WGでのモニタリングを通じて改良を重ね、製品化しました。
(特徴)
- 粉体フッ素加工を施した表面・・・焦げ付きにくく、お手入れラクラク
- 大型化した取っ手・・・持ち運びやすい
- 水位線の設定・・・1合炊き、2合炊きの水位線を設定
- 底部の拡大と平面化・・・IH機器に対応。もちろんガスの直火もOK
ごはん釜(2合炊き)
志ぐれ釜めし
2.蚊やり器(選べる6種の夏模様)
昔なつかしい蚊取線香を置く皿。東京のデザイナーを招聘し、主に首都圏での展開を目指して開発を進めてきました。受け皿を共通化し、蓋のデザインは6種のバリエーションからお選びいただけます。桑名の水郷花火大会を連想させるデザインなど、夏のイメージにぴったりです。
(特徴)
- 薄く、平らなデザイン・・・安定感があり、転がりにくい。もちろん、割れたりしません
- 選べる6種の夏模様・・・花火、泡、雲、朝顔、花模様、蝋燭の6種からお好みのデザインをどうぞ
- 懐かしいエコライフ・・・電気、電池を使わないエコグッズとして再注目
蚊やり器(写真は花火)
6種類のデザインから選べます
花火
泡
雲
朝顔
花模様
ろうそく
5.暮らしに身近な鋳物
鋳物は時代とともに変遷し、近年では自動車部品や橋の手すり、照明器具に鋳物が使われており、私たちの身近な暮らしに欠かせないものになっています。
桑名の町を歩けば様々な鋳物に出会うことができます。代表的な物をご紹介します。
春日神社の大鳥居
寛文7年(1667年)に松平定重が春日神社(桑名市本町)に日本一の青銅製の大鳥居(高さ6.9メートル、柱の周り57.5センチ)を当時としては大金の250両を費やして建立しました。その後、幾多の災害に見舞われましたがその度に修復され今なお残っています。
仏眼院の喚鐘(かんしょう)
市南魚町にある仏眼院には、万治2年(1659年)製の「喚鐘(かんしょう)」が残っています。
その他
新しい物では、フェンスや街路灯のほか、桑名らしく「七里の渡し」「桑名の千羽鶴」「ハマグリ」をモチーフにしたマンホールの蓋など、デザイン性を凝らしているものもあります。このほか、桑名の特産物であるハマグリをかたどった鋳物風鈴などがあります。
(諸戸氏庭園前にある)玉重(たましげ)橋の手すり
”七里の渡”をモチーフにしたマンホール
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